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最高裁判所第二小法廷 昭和25年(あ)3370号 判決 1952年12月26日

本籍

静岡市西五丁目二九番地

住居

埼玉県大宮市桜木町五丁目八二八番地 築地方

茶卸業

藤田松太郎

大正一一年一二月四日生

右の者に対する強盗被告事件について昭和二五年一一月一四日東京高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人萩原由太郎の上告趣意第一点について。

記録によると、第一審判決が同判示事実認定の証拠として挙示している同審証人富沢政男、同板橋キミ子に対する各尋問調書はいづれも同審が昭和二四年一一月八日裁判所外において検証した後その検証現場において検察官の申請に依り右各証人を尋問し、この供述を録取したものであることが認められるにかかわらず、同審は右証人を検証現場において尋問するに際し刑事訴訟法一五八条二項、刑事訴訟規則一〇八条一項所定の尋問事項の告知をした形跡が記録上認められないことは所論のとおりであるから、同審の右証人両名の尋問手続は右法条に違背したものといわねばならない。しかし同審第二回公判調書の記載に依ると検察官は、被告人及び被告人の弁護人の在廷していた同年一〇月一七日の同公判廷において、証人富沢政男、同板橋キミ子の尋問に依り立証すべき事項を陳述してこれが尋問を申請し被告人の弁護人がこれに対する意見を述べた後この申請が採用されるものであることが認められるし、又右各証人に対する尋問調書の記載に依ると、右各証人の尋問においてはいづれも被告人並びに被告人の弁護人が立会つており、かつ、右手続の法令違背について何等異議を述べた形跡もなく殊に弁護人は右各証人に対し尋問していることを認めることができるのである。然らば、右法令違反は、単なる訴訟手続の違法に過ぎず、これを以て憲法三七条に違反するとの論旨の当らないことは勿論であるのみならず、如上説明のごとき本件においては、右の違法は未だ以て原判決を破棄しなければ著しく正義に反する場合にも該当しないものと解すべきである。

同二点について。

第一審判決は被告人の自白の外被害届その他を補強証拠としてあげているのであるから所論憲法三八条違反の主張は、その前提を欠くものであり、その余の論旨はその実質は刑訴法違反又は事実の誤認若しくは証拠の証明力を争うに帰するものであつて上告適法の理由とならない。

また記録を精査しても、他に刑訴四一一条を適用すべき点も認められない。

よつて同四〇八条一八一条により主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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